2009年 03月 03日
「おくりびと」がアカデミー賞を穫り、話題の原作。 昨年から友人に薦められていましたが、偶然にも古本屋で単行本(しかもサイン入り!)に出会って、ようやく読みました。 最初の2章までは、映画の原作となった青木氏の”納棺夫”としてのエピソード。 けれど この本がすごいのは、第3章から納棺夫を職業として見てきた著者の死生観が全体を通して、大きなテーマとして書かれているところ。 「ひかりといのち」では「死」=忌み嫌うもの ではなく、宮沢賢治、三島由紀夫、また親鸞やブッダ 宇宙理論からニュートリノまで引用して、著者の体験した「ひかり」を語る。 他に童話、自選詩、幼年期の旧満州での体験を小説にしたもの、表現はばらばらではあるが ひとつ芯の通ったものがあるので、全く違和感がない。むしろ全体で大きな作品に仕上がっている。 「今日のように日常生活の中にも思想の中にも死が見当たらないような生の時代には、死は隠蔽され、死は敗北であり悪であるとする傾向にある。 死を忌むべき悪としてとらえ、生に絶対の価値を置く今日の不幸は、誰もが必ず死ぬという事実の前で、絶望的な矛盾の直面することである。」 最新医学をはじめ、死をタブー視する現代社会に 一石を投じる原作からの映画。 世界で評価されたことは、人間は誰しも確実に「生きて、死ぬ」という事が平等にある未来だからだろうか。
by bookswandervogel
| 2009-03-03 23:58
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