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2009年 07月 17日

「もう私のことはわからないのだけれど」

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なんの前情報も無しに読んでみて驚いた。今までのカオルコ作品にはなかった異色作。
けれど『日経ヘルスプルミエ』に連載されたこの作品はご自身の体験から書かれたものらしい。

家族に介護を伴う病人がいる人の、『普通の人がもらしたつぶやき』と帯にはあるが、実際は誰に対しても言えないひとりごと、うまく言葉にできない心の奥の奥。

「病気になった親のそばにいないってことは、いけないこと」
「会いにいくのはやさしさからではない、自己満足だ」
「世の中のもっと大変な事情の人に悪いって思うし」
「思ってしまって、思っちゃいけないって言い聞かせるの」
介護の苦労話は実際、人にして盛り上がるような話ではないし、家に病人がいることで褒めてもらえるようなこともない。
ここで語るそれぞれの「ほんとうのこと」は誰かに伝わることのないモノローグだ。
けれどこれを読んで想像するのはとても容易いこと。近くても遠くても、誰にも家族はいるものだから。
リアリスト・カオルコの放った変化球は かなり胸に痛い。

by bookswandervogel | 2009-07-17 01:01


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