2009年 11月 21日
ポール・オースターの小説第一作、柴田元幸による待望の新訳。 主人公は推理小説作家。妻と子供とは死別し、会うべき友も無く今は一人静かに暮らしている。そしてかかってくる真夜中の電話。それをきっかけに彼は不思議な事件へと巻き込まれていく・・・。 ミステリであり探偵小説でもあるが、なんともその枠内では表現しにくい作品。 訳者あとがきで柴田氏が『探偵小説が伝統的に満たしてきた条件が、この小説でも満たされるものと期待して読むなら、たしかにこれほど奇怪な「探偵小説」はない。事実はいっこうに明らかにならないし、「探偵」は何ひとつ解決しない。「探偵」の行動に表面的な意味での一貫性はなく、むしろどんどん理不尽になっていく。』と語っている。 けれども物語への期待は決して最後まで裏切られることはない。 始めの部分で独白として表現された彼自身の欲望が、読み終わったと同時に 望みが叶っている!と知った驚きはなんと言い表すべきか。 人の心の脆さ、きらびやかな都会の中の孤独、普通に生活する人々が均衡を失う危うさが、オースターが表現する主人公から、主人公が歩くうち描写するニューヨークの人々から見て取れて怖かった。
by bookswandervogel
| 2009-11-21 09:05
|
アバウト
カレンダー
カテゴリ
以前の記事
2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||