2009年 12月 20日
苛めを真正面から取り上げ、「善とは、悪とは?」という重いテーマに果敢に挑んだ意欲作。 「苛められ暴力を受け、なぜ僕はそれに従うことしかできないのか」 ある日14歳の「僕」は同じく苛めを受ける同じクラスの女子・コジマから手紙を受け取る。 「わたしたちは仲間です」 思想を持ち、怖れることなく静かに耐え続けるコジマはまるで聖職者のようだ。コジマの存在が僕の今までの日々を肯定し、生きる意味に輝きを与えていた。意味のある弱さの「しるし」を僕の中に持っている限りは。 離れてしまえば、学生生活の日々など 皆が通過する一時の小さな世界の出来事のように思える。 けれどその小さな世界は、実はこの社会という 大きな世界の縮図なのだ。 苛める側の百瀬と僕との対話は、百瀬が圧倒的な強さと現実的な説得力を持っており、現代社会における構造を示唆しているかのよう。 「善」である側のコジマと「悪」である側の百瀬の声がふたつ重なり合うシーンは「善と悪を分かつものは何か」という問いを、読む側に鮮烈にたたきつける。 一度でも弱い側に立ったことのある人にとって、とても痛くて苦しい作品だと思う。 けれどコジマの「弱いかもしれないけれど、わたしたちはちゃんと知っているもの。」という言葉に、その辛かった日々がすうっと肯定されるかも知れない。僕が見た新しい世界に 同じ輝きを見出せるかも知れない。 過去の川上作品はどれを読んでも全くなじめなかったが、再チャレンジした甲斐がありました。
by bookswandervogel
| 2009-12-20 11:27
|
アバウト
カレンダー
カテゴリ
以前の記事
2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||