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2011年 02月 27日

「いちばんここに似合う人」

「いちばんここに似合う人」_b0145178_2395980.jpg
プールのない砂漠で、一度も泳いだことがないという老人たちに水泳を教える『水泳チーム』、恋愛をしたことのない老人が友達に「妹を紹介してやるよ」と言われて激しい妄想が始まる『妹』、顔の痣を手術して取るが、痣とともに「何か」も消えてしまう『あざ』。

読んだことのない、不思議な感覚の十六の短編。
出てくる人は誰もが独り。誰と一緒に居ようと、孤独な気持ちを抱えた一人のひと。

自分の抱える孤独な部分を誰かに伝えることは、とても難しく、とても恥ずかしいことのようでためらわれる。
彼ら自身の孤独は、それぞれ奇妙なかたちをしていて、真剣過ぎて、とても可笑しい。
彼ら自身が思っている「自分」とは本当はすこし、というか結構かけ離れているその姿を見ているこちら側は そのずれが可笑しくて笑ってしまうが、いやいや笑ってられないぞ・・読んでいる私もそう彼らと変わらないかも・・。とだんだん読むうち気付いてくるのだ。

孤独を表現するのに「あーさみしいよう」と主人公を泣かせたりせず、笑いをもって淋しさを書いたこの作品は、独りを楽しむ読書好きにはもってこいの一冊です。

by bookswandervogel | 2011-02-27 23:55


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