2011年 03月 30日
物語の始まりが特にいいと、早くこの続きを!とワクワク感が自分の読書ペースを急き立てる。 平和が戻った第二次世界大戦直後のパリ。8月の光溢れる朝、セーヌ河岸の古本屋でいつものように版画を眺めていたブーベ氏が何の前触れもなくゆっくりと倒れ、息絶える。 長年独り暮らしをし、年金で慎ましく暮らしていたブーベ氏。 住み慣れたアパルトマンの優しい住人たちの手で葬儀を執り行い、埋葬される予定だった。 ところが、その朝の古本屋での写真を偶然カメラに納めた者が居た。 新聞にその写真が載るや、身寄りが無いと思われていたブーベ氏に妻、娘、妹、会社の共同経営者・・・と次々に名乗る者が現れる。 そして遺体が安置されていた部屋が荒らされ、ベッドの下からは大量の金貨が発見される。 いったい彼は何者だったのか? 穏やかな佇まいの老人は、はじめから老人ではなかった。(当たり前だけど) やがて名乗り出た人々の証言から、若く心も体も逞しく未来に溢れていたブーベ氏の過去が明らかになってくる。 様々な顔を見せ、どれが本当だろうかと惑わされるが、皆それぞれが自分と居た時の彼が一番幸せで、本当の彼の姿だ、と疑わない。 死んだ一人の老人の過去に、たくさんの人が関わりドタバタを繰り広げるが、口元に笑みさえ浮かべて亡くなったブーベ氏はさて、どの人にも媚を売らず、固執せず、我関せず そして真相は明かさず、ただ一人幸せそうなのである。
by bookswandervogel
| 2011-03-30 01:15
|
アバウト
カレンダー
カテゴリ
以前の記事
2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||