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2013年 07月 12日

「ここは退屈迎えに来て」

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普段から新しい物に飛びつけません。携帯を持ったのも人よりかなり遅く、スマホに乗り換える予定も今のところなし。きっと『新しいものに乗ってる自分』というのが、気恥ずかしいんだと思う。自意識過剰か。
けれど新しい音楽とおもしろい作家は、いつでもアンテナをびんびん立てて探していたい。

デビューしたてなのに「おお!」と思わせる作家さんに出会うとかなりうれしい。
この時ばかりは最先端に触れた気分を味わいます。
版切れとかの心配なく、始めからオンタイムでどんどん読めると思うとわくわくする。

この本は、読んだあとに「この素晴らしい作品に、なんて絶妙なタイトル..。」とその才能に惚れ惚れした山内マリコさんのデビュー作。
中途半端に都会の空気が流れて来てる 国道沿いだけやたらネオン輝く地方都市。
何色にもなりそうにない個性に萎れて、けれど自意識だけは高く、退屈を持て余す環境や、その土地での自分の未来がちらっと見えるのから目をそむけようとする女の子たち。

ショッピングセンターをティアドロップのサングラスをかけて、セレブ気取りで歩く二人の女の子の描写なんかは、読んでいて『イタイイタイ!イタイってば!』とウヒヒと苦笑いする場面だが、出てくる誰もが愛しく、かつての自分やつるんでいた同級生を、読んでいて幾度も思い出した。

連作の短編集で、椎名くんという男の子だけが全編に登場する。
彼は全国どこにでも居る、その土地限定で輝くヒーロー、学校に一人は居た身のこなしの軽やかなモテ男。
皆が共通に知っている人物で、彼だけ屈託ない幼少期からきらきらと輝く青春期、そしてお父さんと呼ばれる人になるまで時間を追って描かれ、全体の時間の経過とまとまりを与えている。
その手法がさりげなくてなんとも上手い!

吉田修一の『悪人』とか、地方都市を舞台にした作品は数多くあれど、こんなに女子のジレンマを嫌な感じを与えず、懐かしくて照れくさいような気持ちになるほどリアルに描かれた作品はないと思う。
私自身も地方で何年か暮した時期がある。夕方のショッピングセンター、あの無機質な建物に相反する背後のもりもり青々とした山々、またその後ろの泣きたくなるような夕焼けとかを思い出して、久々センチメンタルに浸った。
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by bookswandervogel | 2013-07-12 01:28


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