2013年 08月 16日
ハングオーバー!!!最後の反省会』(13)トッド・フィリップス 『ナイトピープル』(12)門井肇 『第十七捕虜収容所』(53)ビリー・ワイルダー 『高速ばぁば』(12)内藤瑛亮 『ペーパーボーイ 真夏の引力』(12)リー・ダニエルズ 『ジャッカルの日』(73)フレッド・ジンネマン 『妖僧』(63)衣笠貞之助 『怪猫トルコ風呂』(75)山口和彦 『ハングオーバー!!!』猛烈な二日酔いで目覚めたら前日の記憶が全くない!部屋ん中はメチャメチャだしトイレに虎がいたりする・・・一体何があったんだ!?謎を解明しつつ消えた友人を捜す・・・という設定が最高であった一作目。殆どその焼き直しであった2作目はテンションガタ落ちだったのでもう3作目はいいかな~と思いつつも観たらこれはイケた!前二作の骨子から解き放たれ、謎の犯罪組織に拉致られた友人(1作目で行方不明になった人)を救うための3人組の悪戦苦闘が描かれる。1、2作目で思いっきり暴れまくっていた脇役の犯罪者チャオが殆どメインといっていいくらいの活躍を見せていて、この人、強烈に可笑しい人なのですが何分にも悪人なので全編に渉って殺伐としたアクションの比重が高くなっていて(シリーズ初の死人も出る)その辺りの今までとのテイストの違いをどう観るかで評価が割れると思いますが、当方、命の駆け引きギリギリの所で提示される男の友情ってヤツにからっきし弱いのでかなり楽しめました。運命の糸に操られるかのように舞台はベガスへ移り(劇的に夜景を映し出すキャメラがイイ!)H・グラハムとの再会をサラリと描くなどシリーズファンへの目配せも抑制が利いていて好感度高し!過去に『スタスキー&ハッチ』という意外とシリアス度の高いポリスコメディの傑作を物しているT・フィリップスだけにこの犯罪映画的なシフトチェンジは実は望むところであったのでは。だけどこれじゃあ『ハングオーバー』じゃないんじゃない?というこちらの不満も例によってエンドクレジットの途中ですっかり解消されるっていうやり口もイイ!『ナイトピープル』しがないバーのマスター(北村一輝)バーに転がり込む謎の女(サトエリ)女の過去を知る刑事(杉本哲太)の3人によるハードボイルドな駆け引きがムードたっぷりに描かれる前半の何処に転がるのか解からないだまし合いという知性の高い映画ぶりが一気にブチ壊しになる間抜けどものハードな銃撃戦が延々と描かれる後半というハチャメチャな構成が実はキライじゃない。『スティング』みたいな事と『ヒート』みたいな事両方やりたかったのであろう作り手の熱い思いを買う。映画を転がすために終盤抜け作ぶりを発揮しまくる哲太の孤軍奮闘ぶりに泣け、組織からの裏切りにあいひとり静かに怒りを燃やす男(三元雅芸)にシビれる。『第十七捕虜収容所』ワイルダーらしい笑いとサスペンスが横溢する娯楽作だけど脱走に失敗した捕虜の死体が庭に転がっているのを集合させられた捕虜達が順繰りに隣にいる人に知らせるとか(そんなの目の前に転がってるんだから皆すぐ気付くだろ)スパイの合図(チェスの駒、電球)のこれ見よがしの撮り方とか、しょーもないほどあざとい映画作法が今観るとなんとも脳天気。スパイを炙り出してそいつをドイツ兵に銃殺させてる間に脱走って手口も何とも酷いけど、まあ古き良き時代のエンタメに野暮はいいっこなしってことで。『高速ばぁば』主役の女の子の面構えと映画全体の妙なザラツキぶりが強烈だった『先生を流産させる会』の内藤瑛亮の新作がホラーだってんで「おお~ピッタリじゃん!」と勇んで観た。閉鎖された廃墟にB級アイドル3人組が撮影の為に潜入するっていう手垢にまみれた設定の中に内藤監督らしい陰惨さが充満している!オープニングで三人組のひとりの女の子が別の女の子のジャージにホッチキスの針を刺しておいて怪我させるというイジメの描写をキッチリ入れ込み観客の心をいきなりドンヨリさせる。どこぞの公園で行われる殆ど観客のいないミニコンサートシーンも直視できないほど寒々しくてイタイ。廃墟に現れる化け物もこういう映画にありがちなわけのわからないものではなくかつてその施設で虐待を受けて殺された老人達の恨みの念がそうさせているという背景をキッチリ設定し、実際に虐待シーンをこれでもかと直截的に描き出すこの悪意に満ちた几帳面な映画作法!3人のアイドルを始め事件に巻き込まれた人達が悔い改めても命乞いしても全く報われる事なく理不尽なまでに非道い殺され方をしていく非情な展開も素晴らしい!高速で走るババアってのがイマイチ効果的に映画に作用していないのが唯一の不満。以下次回に続く(予定)。ひと言だけ『ペーパーボーイ』大傑作!!
by bookswandervogel
| 2013-08-16 00:37
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