BOOKS WANDERVOGEL

bookwangel.exblog.jp
ブログトップ
2013年 09月 13日

『その青の、その先の、』

b0145178_21253843.jpg
消しゴムを拾うときですら、どこかしら緊張してる。
自意識過剰で、自分だけにしかできないなにかを探したくてうずうずしている。
十七歳なんて、もうとっくの昔だけれど。そうそう。そうだったそうだった。

主人公まひるは高校2年生。つきあい始めた彼が落語家を目指しているのを知って驚く。
悩みも夢も違う仲良し4人グループはつかず離れずの良い関係良い距離だ。
けれど周りのみんなは、自分よりも高いところに居るように感じている。
きちんと自分というものの役割をこなしているかのような・・・。

まひるは自分の輪郭があやふやで、この世に存在しているのかさえ、時折あやしく思う。
いつか自分が死んだら?いれものがなくなったら?

高校生のきらきらした日々の描写と同時に、どこかさみしさや、死の匂いを感じさせる物語だ。
それでいて暗くならず、悲しみを踏まえた上での明るい未来が見える。
風景の描写がとてもきれいに丁寧に描かれているからだろう。
綺麗だと感動しながら、泣きたくなるような郷愁に襲われる。
そして読んでいるこちら側が、まひるの痛みをもうすでに経験しているということも大きいかも知れない。
青臭いだけの青春小説と一線を画するのは、作者の視線がすべてを俯瞰した高いところにあり、彼らを包む温かな抱擁を常に感じるところ。

まひるの父が言う。
「ある日突然、これまでの人生がなくなることだってあるんだ。昨日までの日常が永遠に続くなんて 、それこそ夢かもしれないぞ。」
十七歳を過ぎた私たちは、おそらくこれまでのどこかで胸を痛ませ、そのことを知っている。

『ばかみたいに幸福な時間だった。同時に幸福な時間は、少しのさみしさを連れてくるのだと、まひるははじめて知った。』
まひるの心の変化に、しんとする。その当時の自分の気持ちを思い出し、ただ浮かれてはしゃいで過ごしているだけではない彼らの、真面目でまっすぐな成長を本が終わるに連れて感じていく。
自分自身の青春期の恥ずかしさと後悔と懐かしさも、読んでいるあいだずっとそばにある。
[PR]

by bookswandervogel | 2013-09-13 01:24


<< 『夏の嘘』      「ペーパーボーイ 真夏の引力(... >>