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2008年 10月 28日

「金閣寺」

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ミシマは高校の頃に読んだっけなぁ・・と 文庫売場で手に取った。
夏になると、各出版社がフェアをやるので 昔読んだ本を読み返してみたりします。

本は読む人によって受け取り方が違うし、またその読む人の環境、経過した時間
経験したこと その時の感情 それらがころころ言葉の色合いや感触やにおいを変え、
読み返すたび 変化し続けるのだと思う。


はてさて何年ぶりかに読んで何を感じたかというと。主人公がとても近い、と感じた。
(読んだ方は それはまずいんじゃない?と思うかも知れないが・・。)
いったい高校生の自分はどう受けとめたかは さっぱり忘れてしまったけれど。

音楽についての印象深い一節。
「それにしても音楽の美とは何とふしぎなものだ!吹奏者が成就するその短い美は
 一定の時間を純粋な持続に変え、確実に繰り返されず、蜉蝣のような短命の生物
 さながら、生命そのものの完全な抽象であり、創造である。
 音楽ほど生命ににたものはない。」
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by bookswandervogel | 2008-10-28 23:01
2008年 10月 25日

「何も持たず存在するということ」

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角田さんの最新エッセイ。
おこがましいとは思いつつも、角田さんはとても近しい友達
みたいに感じる。
同じ世代の作家の中で「近い」という感覚が、いつ読んでもある。
年の似た女の人で、食べることが好きで、音楽をよく聞く。
エッセイを読んでると、何か趣味が共通する友人の家に泊まりに行って、夜中にしっぽりくつろいで ぽつぽつ話しているような感覚になる。


本を「書くこと」と「読むこと」について。

ー 双方とも「創る」作業だと私は思っている。読むことは受動的な行為だと
  思っている人は多い。けれど そこにある言葉を読む・・すると心には、文字以上の
  ものが広がる。例えば聞いたこともない料理が出てきた時、食べる主人公の舌を獲得し、
  懸命に想像して、味わう。この行為は受動ではなく能動である。
  つまり「創る」行為である。ー

そしてまたまた おこがましく私は そうかぁ 一緒なんだね、創ってるんだねぇ 私もー。
などと 相づちを打ってみたり、なんかして。
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by bookswandervogel | 2008-10-25 01:21
2008年 10月 19日

「きのうの世界」

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一人の男がいきなり姿を消し、一年後にとある町で死体で発見される。
男は会社員。真面目で温厚、特に特徴も思い出せないような「普通の男」。
失踪した男が最後に暮らした町で 彼に少しでも関わった人物が 
語り部となり事件を追う。出てくる人物は、男を含め普通に暮す市井の人々。どこにでも居るような 人としての営みを繰り返す人々。

けれど人は多面性が誰にもあり、自分が見ている「その人」は必ずしもその人の全てではない。そして「その人」の持っている負の要素 たとえば孤独であったり 寂しさ 劣等感 悲しみ怒りいろいろな違和感・・はどんなにその人を心から理解しようと思っても、努力はできても当人の持つ深さまでには、誰も辿り着けないものなのだ。

男には、ごく普通に見えていた男には 誰も持ち得ていない ある能力があった。
男は死ぬけれど、ラストの彼がゆっくりとこの世から去る場面は、彼の今までのとてつもない孤独感が痛いくらいに感じられて、寂しくて寂しくてしょうがなかった。
それは人の痛みを自分のモノのように感じたいのだけれど、辿り着けないんだと思い知らされた時の寂しさ、
だろうか。
話自体はSFやファンタジーが色濃いけれど、でも・・想像を膨らますと、通勤電車で乗り合わせた隣のこの人は・・と思わずにはいられないリアリティがある。
恩田陸らしい不思議で不安定な世界。
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by bookswandervogel | 2008-10-19 01:21
2008年 10月 14日

「ありったけの話」

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この作家もデビュー当時から気になって、読んでいるひとり。
これが3作目です。

一度離れてしまった大事な人と、また繋がりたいと願う ひと。
お互いにとても求めているのに、永遠に繋がれない ひと。

主人公のユキが 前に進めるようになったのは 父親を雪山で亡くした
少年・葎の存在があったからだ。
少年は真夜中、冷蔵庫の前に座り 父親を待つ。
まるでトビラが雪山の向こうのお父さんに繋がってるかのように、待つ。

でも生きてれば ほんの少しのきっかけだけで 少しづつ歩み寄れる。
6年間 問い続けた「ありったけの話」を持って、会いに行ける。
たとえどんな人になっていようと、会いに行ける。

友達との関係の描き方が、あまり共感できなかったけれど
全体にほの暗い 雪の積もった冬の日に、重たい雲間からきらっと光る太陽を見たような
そんなお話でした。

作家本人が描いた本の隅っこのパラパラ画も、最後にぴょいっと、飛ぶのです。
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by bookswandervogel | 2008-10-14 23:12
2008年 10月 10日

「波打ち際の蛍」

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この人の繊細で丁寧な 心の中の描き方に惹かれて
処女作からずっと読んでいる。

うーん・・私とってはちょっと乙女チック過ぎるなぁ・・という場面もあるけれど、いつも新刊が出るたび すごく楽しみにしていて、
しかも読み進めるのがもったいない まだ読んでたい、と思わせるものは やはりこの人の持つ筆の力なのだろう。

心に深い傷を負った女の子と その後出会う男の子の、惹かれ合っているのに近づけない、はがゆい物語。主人公の女の子の心の傷が、
現在と過去が 少しづつ丁寧に描かれている。

特殊な傷 特殊な恋愛に見えがちだが、でもそうではない。
出てくる人の痛みを おなじに「痛い」と思うのは、誰もがその痛みを知ってるからだ。
恋愛で傷ついたことのない人は居ないし ひとつとして同じ恋愛は無い。

人 で負った傷は 人にしか 治せないんだよなぁ。
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by bookswandervogel | 2008-10-10 00:20
2008年 10月 05日

「谷川俊太郎 質問箱」

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すごく近くに居る人のような顔で、谷川さんが答える。
時になんだか突き放したような答え。
大人の人らしいまっとうな答え。
そしてこちら側が考えもしなかったような、どきどきしちゃう答え。

高校生の頃 バイトして稼いだお金で、谷川さんの本を一冊ずつ買うのを楽しみにいていた。言葉に匂いがあるような、どきどきさせる詩人の本。
男の人の”色っぽさ”を年の離れた詩人に感じた。

あれから随分経った今も、私の中の谷川さんの位置は変らない。
谷川さんはいつだって、先を知ってる大人なようで うぶなようで 正直なようで 
うそつきなようで。
そしてこの人はいつだってあたらしい。そして色っぽい。

ちなみに「色気はどうしたら出るのでしょう?」 という質問に、
詩人はやはり ほほーん、という 答えかたをしている。
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by bookswandervogel | 2008-10-05 23:26
2008年 10月 01日

「生きるとは、自分の物語をつくること」

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対談として、とても短い本。まだ続くはずだったものだから。

「博士の愛した数式」の話から なにか世間話のように続く
ふたりのやりとり。
小川さんの素朴な質問にわかりやすく、ユーモアあふれる言葉で
かえす河合さんの言葉が 読んでいるこちらにもやさしく響く。


「人は、生きて行くうえで難しい現実をどうやって受け入れていくか
 ということに直面した時に、それをありのままの形では到底
 受け入れがたいので、自分の心の形に合うように、その人なりに                     現実を物語化して記憶にしていく、という作業を必ずやっている。」

臨床心理では、自分なりの物語を作れない人を、作れるように手助けをする。

作家はその人の記憶を お話の形で取り出して、再確認するために書いている。

私は、自分の中の もやもやしたどうにも形にできない記憶を、詩を読んだり
小説を読んだり 言葉という形で体験して、やっと心の中に ごっくんと受け入れることが
できているようなような気がするのだ。

あとがきの長さは 小川さんの悲しみ さみしさを表している。
お会いしたことさえないけれど、ひまわりみたいな温かなひとを亡くしてさみしい、
という気持ちを 小川さんと同じく味わった。
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by bookswandervogel | 2008-10-01 00:06