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2009年 01月 23日

「テースト・オブ・苦虫6   おっさんは世界の奴隷か」

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この人のエッセイは困るのだ。
普段公共の場、電車やバスの中、駅のホーム、社員食堂・・様々なところで読書を試みるが、この人のエッセイはポーカーフェイスを努めようと顔に力を込めて読んでいても、思いがけず「ぶっ」と吹き出したり、ニヤニヤ笑いがどうにも止まらなかったり・・・。

なので、”家読み専門書”と自分の中で位置付けている。

苦虫噛んで6冊目の今回も、妄想止まらず心地良くこちらは振り回される。
話の最後にオチみたいなものが来るのが、絵本によくある結句「とっぴんぱらりのぷう」だとか「どんと はらい」とかを最後に目にする感覚、ちょっとした驚きと安心感が入り交じったような そんな感覚と似て楽しい。
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by bookswandervogel | 2009-01-23 23:55
2009年 01月 17日

「草祭」

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美奥という街をテーマに書いた、連作短編集。
待ってました恒川ワールド!と言いたくなるような、読んでいると現実の街からひょいとした瞬間にいつの間にか異界の世界へと足を踏み入れている。
異界と言っても、どろどろとした怪奇で怖い世界ではなく、どことなく懐かしく美しい。
出てくる人物は 現代の中学生であったり いつの時代?と思わせる僧侶であったり。
おどろおどろしい化け物は妖怪?怪物? 言葉で判別しにくい土着的なモノノケとでも言おうか。

圧倒的なファンタジーの美しい世界。その中で描かれる人物は優しくて醜く、残酷でせつない。恒川ワールドに一度はまった人は またあそこに行ってみたい・・と 小説の中のいつの間にか不思議な世界へと足を踏み入れた主人公のように、ふうらふらと誘われるのだ。
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by bookswandervogel | 2009-01-17 23:55
2009年 01月 16日

「草すべり  その他の短編」

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主人公は55歳の内科医。患者の死に多くかかわり、ストレスを負いきれなくなってうつ病を発病した。50歳を期に山を登り始める。

決して颯爽たる山歩きではない。
いつのときも自分に自信などなく、腰がひけたかたちで山を歩くうち、山の起伏が変わるように主人公の頭の中で様々な人生の記憶が浮かんでくる。

「出来事は起こるときには起きるのであり、それはそれでありのまま引き受け、黙々と、淡々と処理するしかないのだと開き直れる年齢まで生き延びてしまった」

「自分がかぎりなく卑小な人間なのだと自覚してしまえば、金で幸福は買えないけれどたいていの不幸は遠ざけられる、という品のない薄っぺらな箴言はすんなり胸底に落ち着いてくれる」
そんなセリフを吐きながらも、人生で言うと下山道を歩いている彼からは 疲れ果てた感じや 傲慢さ 諦めなどは感じられない。
下山道でもうろうろ おろおろする、生きていくこと自体が思い及ばない若者のような初々しさに共感が持てた。
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by bookswandervogel | 2009-01-16 23:58
2009年 01月 11日

「森に眠る魚」

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女の人なら 誰でも経験はあるだろう。
何人かの女性のみで作られた「仲良しグループ」の居心地の悪さ。
だいたいは小中学生で経験し、高校生くらいになったら女同士よりも好きな男の子や彼氏のことで目一杯で 女の子のグループなんてどうでもよくなるものだと思うのだが。

けれどこの小説では恋愛も結婚も済んだ女の人たちが、また「仲良しグループ」を組んでしまうところから悲劇が生まれる。
女性の習性なのか、彼女たちは望んでいるのか無意識的なのかわからない間に、子供を介して出来た「ママ友仲間」を作る。


親しくなっていくうち嫉妬、疑心、依存心がじわりじわりと膨らんでゆく様子は、読む側にも知らない間に後ろから暗雲がゆっくりと迫って来ているかのよう。
実際にあった殺人事件を題材にしているが、この小説の人物と同じように 誰一人もともと悪い人間は居なかっただろう。けれど誰しもが加害者に成りえただろうと思わせるところに、この小説の本当の怖さが隠されているような気がする。
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by bookswandervogel | 2009-01-11 23:52