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2009年 02月 28日

「どこから行っても遠い町」

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ある商店街を舞台にした11のお話。
語り部を一編ずつ変えて 読み進めるうち、だんだん町の輪郭がふわ〜っと現れてくる。

人と人との不思議な距離感。ここに出てくる誰もが誰かと”のりしろ”くらいの大きくも小さくもない範囲でつながっていて、時に寄りかかるように、時に冷たく突き放すように 薄く厚くつながる。

でもなんとなく、そこには愛しい距離が生まれていて たとえば自分の、自分と誰かさんの距離を、ふっと思い出すのだ。

自分と正面からぶつかって 体の中に何か大きく重いものを残していったあの人。
さぁーっと 通り過ぎるように去って行って、でもふと記憶にひっかかるようなあの人。
家族のようで 身内のようで、ずけずけ入って来ては絶妙な距離を保つ、あの人。
めんどくさいよな、でも無性に会いたくなるよな、そんな人がこの町には居ます。

表紙は「週刊新潮」の表紙絵で知られる、谷内六郎さん。
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by bookswandervogel | 2009-02-28 23:58
2009年 02月 18日

「ブラザー・サン シスター・ムーン」

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高校時代にひょんなことで出会った三人。同じ大学に進み、それぞれの道へ。
一人が一章、淡々と過ぎた学生時代を振り返り語る。
思い出を熱く語るのでもなく、あの日に帰りたいと懐かしく感傷にひたるのでもなく、三人が色濃く混ざり合うわけでもない。
けれど三人のある共通のぼんやりした思い出が彼らを繋いでいる。

出てくる三人は、ドラマの主人公のような中心になる様な人物ではなく、クラスの端っこ 窓際にいつも居るような、けれど何故か存在感があるような人物。

彼らの語る学生時代の思い出は、自分とは似ても似つかないはずなのに妙にリアルだ。
「そもそもあまりに平穏で、たいした話もない。その癖、妙に痛い気がするのだ。あの無為さ、愚かさ、平凡さが、時を超えて心の底で鈍く痛む。自意識過剰なのにコンプレックスの塊で、やっとプライバシーを手に入れたのに人恋しく、何者かになりたくてたまらないのに、足を踏み出すのは恐ろしかった。」

ゆらゆら揺らめく、ちょうど表紙に写されている影のような印象の小説。
第三章の話の構成が、変わっているけれど情景を想像し易く 面白かった。
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by bookswandervogel | 2009-02-18 00:55
2009年 02月 14日

「本づくりのかたち」

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8plusという個人出版社(者)を運営している芳賀八恵さん。
これは同じ様に独自の出版活動をしている人たちの「本づくり」を紹介し、自分のこれからの方向性も考えて行こう、という真面目な人のまじめな本です。

毎日たくさんの本が出版される中、利益優先で「ほんとにこの人、こんな本が出したかったのだろうか?」という本もあれば、リスクを背負ってでも出版したい!と作られる本。
商業出版と自費出版。ケータイ小説、書店枠だけじゃないミニレーベル。

この本に載っている本もいろいろな流通の仕方で世に出されている。
共通しているのは、自由に独自のやり方で信念を持って本づくりをしているということ。
ひとりよがりにならないようにしていること。本、という表現の場がとても好き ということ。

熱意を込めて作った本は、ひとり歩きして誰かの心に響いていくはず。応援しています。
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by bookswandervogel | 2009-02-14 23:03
2009年 02月 12日

「旅する力  深夜特急ノート」

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「深夜特急」の旅に出るまでのエピソード。また作家として成り立つまでの若かりし やんちゃな沢木耕太郎が描かれていて面白く読んだ。
「深夜特急」を読んだ人なら、旅のルート、旅の本当のゴール、旅を終えて執筆までかかった日々・・など、沢木さん本人に聞いてみたかったことが随所にあり、この本を読んだ後にまたもう一度目線を変えて「深夜特急」を改めて読んでみたくなる。

人が生きていく上で「予期しないことが起きるということを予期していないところ」に問題が起こる。旅はあらゆる偶然に満ちている。旅をする力とは「偶然に対して柔らかく対応できる力」を身につけることなのだ。そして旅は、自分が人間としていかに小さいかを教えてくれる場であるとともに、大きくなるための力をつけてくれる場でもある。

人生=旅 なのですね。いいとこ全部言っちゃった。  あああ旅に出たい。
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by bookswandervogel | 2009-02-12 23:39
2009年 02月 10日

「ことばになりたい」

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「日本で詩人は喰えない」と言われ、言葉を売る仕事=コピーライターとなった一倉宏。
彼のコピーを私達が目にすることは少なくない。

これは純粋な詩人に憧れる著者自身の作品集。

装飾が多く、ちょっと恥ずかしいような甘い詩が多いが、きっと彼が仕事として生み出す、ポップでキャッチーで短い言葉よりも、彼らしく自由な言葉たちなのだろう。


「言葉なんて憶えるんじゃなかった。」とうたった詩人も居たが、言葉に憧れ続ける詩人も居るのだ。 

     そうだ 私は ことばになりたい
     あなたに届く ことばになりたい
     たとえ 上手なことばでなくたって
     あなたと通える ことばになりたい
     やっぱり私は ことばになりたい
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by bookswandervogel | 2009-02-10 23:57
2009年 02月 07日

「彼女について」

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魔女の母をもった由美子。ある哀しい事件が起き、孤独ながらも一人特に不自由無く暮らしている。そこに同じく魔女の双子の母から育った 自分とは違う、育ちの良さと優しさを持ったいとこの昇一が現れて・・・。

ばななさんの作品はいつも人の死が寄り添ったものが多い。
けれど最近は主人公の描き方とか周りの人物などのパターンが少し似たものが多いなぁと思っていた。
今回も似た感じかな・・と読み進めていたが、途中から「!」と一気読み。

彼女の死生観みたいなものが最も色濃く、しかも素敵に描かれた作品だと思う。
思いがけず死に別れてしまった人や 亡くなってからもずっと気にかかっている人が、もし「あの世」みたいなものがあるのなら、こんな風に過ごしていて欲しい。

傷ついた過去を持つ、あたたかい人のあたたかいことば。
「抱きしめられたこと、かわいがられたこと。それからいろいろな天気の日のいろいろな良い思い出を持っていること。おいしいものを食べさせてもらったこと、思いついたことを話して喜ばれたこと、疑うことなくだれかの子供でいたこと、あたたかいふとんにくるまって寝たこと、自分はいてもいいんだと心底思いながらこの世に存在したこと。少しでもそれを持っていれば、新しい出来事に出会うたびにそれらが喚起されてよいものも上書きされて塗り重ねられるから、困難があっても人は生きていけるのだと思う。」
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by bookswandervogel | 2009-02-07 23:53
2009年 02月 05日

「東京夜散歩」

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タイトルに惹かれて読んでみました。
散歩嫌いな人ってあまり居ないと思うけど、さらにそれが「夜」だとなぜかテンション上がります。

東京郊外の散歩は、都会と違って思わぬ暗闇に突然はまりそうだ。少し高台に登れば木々や草の生い茂るモノノケの出そうな闇から、ベットタウン特有の規則正しく並んだ灯りが見える。

左官職人の挟土秀平さんは「夜の永田町は飛騨高山の闇に似ている。」と話している。永田町が??と不思議に思うと同時に、是非夜の永田町に足を踏み入れてみたくもなる。
夜の都会をふらふらぶうらぶら歩いて・・歩いて・・いつの間にか東の空が白んで来て・・というのもタイムワープしたみたいで面白いだろうなぁ。
RCサクセションの曲『夜の散歩をしないかね』 の ぼやーっとしたロマンチックな世界。
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by bookswandervogel | 2009-02-05 23:56
2009年 02月 04日

「モダンタイムス」

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時は21世紀半ばの日本。多忙極めるシステムエンジニアが事件に巻き込まれる。自分が巻き込まれた事件の「核」を探し出そうとするが、実像が現れない。掴めない。

本の1/3あたりで映画「モダン・タイムス」の話が出て来て半分種明かしをしているので、だいたいどのような流れで行くのか、わかっていたのだけど・・。

漫画紙の連載小説、ということで作品的に狙ったのかも知れないが、読み始めの部分からマンガ的な要素が多く、伊坂節もさらにパワーアップ。一章の中にに面白い要素を詰め込み過ぎている気がする。

エンタメ系の小説をあまり読み慣れてないせいだろうか?
途中で主人公の友人として、小説家・井坂好太郎が出て来たあたりで少ししらけてしまった。
けれど若い読者の活字離れが深刻な中、漫画紙での連載も当たって この本はとても売れたのです。
ケータイ、ゲーム、パソコンが主なツールの若者たちに 1200枚もの紙に書いた字を夢中で読ませた伊坂センセイ、あなたは偉い。
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by bookswandervogel | 2009-02-04 23:49