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2009年 06月 30日

「トロムソコラージュ」

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谷川さんにしては長めの詩を集めたもの。
旅を材料に書いた表題作以外は 発想もスタイルも一定していない。
物語的な要素が、普段の短い詩よりも隠し味のように加わる。

表題作「トロムソコラージュ」がなんとも格好いい。
まるでフリージャズやロックのような旋律で、前衛的かつスピードとリズムに溢れている。

「詩にはメッセージが無い」というのが彼の基本的な立場。
ある美しいひとかたまりの日本語を、そこに存在させたいだけなのだ。
普通は自分の書いたものが、たとえ一行なりとも永遠に残り、自分が死んだ後も人々に口ずさまれるというのが根深い欲求のように思うが、彼にはそれが無い。
「全て流れ去っていくものでいい。」

私は立ち止まれないよ
それは不快なことではありませぬ
疲れることはままあるけれど
万物は流転するのが筋だから言い訳はしない
おかげで会えるからね
あなたに会える 君に会える     

           『トロムソコラージュ』より

現代詩はなかなか人気の無いジャンルだし、なぜかハードルが高いと思われがち。
けれどたとえ表層が難解であっても直感的にわかっていいと思う。
「なんか、うまく説明できないけどこの詩いいな」と思ってるときはたぶん繋がってる。
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by bookswandervogel | 2009-06-30 23:58
2009年 06月 29日

「1Q84」

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社会現象になりつつある「1Q84」。
毎日新刊書店に立っていますが、飛ぶように売れる、とはまさにこのこと。
旬なうちに読み終えました。でも私の周りには読んだ人がまだ居ない・・・。
あぁぁぁ・・・。語りたい・・この話題の書物について、意見を述べ合いたい・・。
まだまだ読んでいる途中、という方も居るでしょう。特に感想は今回述べないことにいたします。
こんなにも多くの人が同じ小説をここかしこで読んでるって、すごいこと。

特別ハルキ狂でも、彼の作品を全部読んできた訳でもないのだけれど、今回の小説は万人受けするタイプの小説では無い気がする。(あ 言っちゃった。)
久々の書き下ろし長編だったことや発表の仕方、またエルサレム賞受賞の話題もあって 老いも若きも買い求めてはいるけれど、村上春樹を初めて読む人にとって、この作品はどうかなぁ?とも思う。

改めてエルサレム賞のスピーチを読むと、内容がかなりリンクしているように私は感じた。
『作り話を現実にすることによって、小説家は真実を暴き、新たな光でそれを照らすことができるのです。』
『私達は皆、程度の差こそあれ、高く、堅固な壁に直面しています。その壁の名前は「システム」です。「システム」は私達を守る存在と思われていますが、時に自己増殖し、私達を殺し、さらに私達に他者を冷酷かつ効果的、組織的に殺させ始めるのです。』
また、昨年亡くなったお父さんについて述べられた箇所は、主人公の父と重なる部分が大きいようにも見えた。


「システム」に対する警戒警報を鳴らすこと。
個々の精神の個性を明確にし、それに光を当てること。
小説を書く目的はそこにある。そのために日々、本当に真剣な作り話を紡ぎ上げていくのだ、と彼は語る。

個人的には、燃え尽きずに燻ったまま読み終えてしまった。(あ また言っちゃった。)
BOOK3、BOOK4、ありますよね、村上さん?
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by bookswandervogel | 2009-06-29 23:57
2009年 06月 19日

「美しいこと」

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赤木さんは「美しいってなんだろう?」と ずっと ずーっと考えている。
物を作り出す人は常にそこに行き当たる。晴れることのない問いなのだろう。

『僕は、人が何かを作り出すときの苦しみが好きです。迷ってる姿がいいなと思います。美しいものを作りたいなと思いますが、美しいものは、ただ美しいだけのものではありませんよね。

書にしろ、文章にしろ、器にしろ、彫刻にしろ、人間が手にかけるものはすべからく、その人の持っている醜さや嫌らしさまでも現れてきます。ただそれだけで終わるなら、それは取るに足らないつまらないものですし、やっていることは排泄行為と同じです。』

この一人の「作る人」は、自分と同じ「作る人」を各地に訪ね、話を聞き 物を見、さらに自問自答する。
時に青臭い言葉を吐き 時に親しい人にも否定され 時に涙をぽとりと落として。

ある人は言う。「美しいものとは、その人の内側にある精神がきちんと現れたものです。」
赤木さんの修行僧のような旅は、まだまだ続くんだろうな。
今だ思春期の青年のような 透明な美しさを引き連れて。
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by bookswandervogel | 2009-06-19 01:07
2009年 06月 11日

「幸せ最高ありがとうマジで!」

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岸田國士戯曲賞、お祝い申し上げます。
本谷さんの作品で初めて戯曲というやつを読むようになりました。
あなたの作品はいつもイタイ主人公が出てきて、読むたび辛いし、苦しくなる。
けれど、イタイ主人公をとことん振り回し、重いテーマをドタバタとした笑いに変換させて、タブーなマイノリティに市民権を得させる、という手法は毎回 ううんと唸らせるものがあります。

出てくる人々はそれぞれどこか自分の中で『ぜつぼう』しているけれど、この世との折合いをどこかでつけて毎日暮らしている。それぞれのやりかたが、それぞれの生き方となって、生活は続く。
問題は何も無いかのように淡々と続いていた生活に、『不幸の無差別テロ』と称して或る女が現れて・・。

傷つき易く、理不尽な痛みを抱えた今の社会において、ここまで痛快に、ここまでタブーなテーマを露骨に描く本谷さん自身、ものすごく生きにくい方なのではないか?と想像しています。
けれど その生きにくさをひっくり返して、勢い表現する あなたの生き方はとてもかっこいいと思います。
これからもたくさん書いて、よそよそしく冷めた現代社会に 熱い爆弾をぼっとんぼっとん落とすような人で居て下さい。期待しています。   かしこ。
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by bookswandervogel | 2009-06-11 01:03
2009年 06月 06日

「火を熾す」

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たまたま見たNHKブックレビューで、大人達がこの作品の面白さを目をくりくり、わいのわいの言っているのが面白く、そこまで言うなら とまんまと乗せられて読んでみた。

アメリカ文学の巨匠と言われるジャック・ロンドンの残した200以上ある短編から、柴田元幸が9編選んで翻訳したもの。僅か40年のロンドンの生涯は小説のように波乱に満ちているが、その濃縮された『生』みたいなものが彼の作品には力強く描かれている。

訳者あとがきより。
『ロンドンの短編の終わり方は、個人的に非常に面白いと思っていて、時にはほとんど冗談のように、それまでの展開をふっと裏切って、ご都合主義みたいなハッピーエンドが訪れたりする。そうした勝利の「とりあえず」感が、逆に、人生において我々が遂げるさまざまな勝利の「とりあえず」さを暗示しているようでもいて、厳かな悲劇的結末とはまた違うリアリティをたたえている気がする。』

随分昔の作品なのに色褪せていないのはそこなのだろうか?
幻想的な作品は、その不思議な世界にふらふら迷い込んだと思ったら 出口ではなく、もと居た入り口にまた立たされていたりする。
他の作品も緊張感溢れる筆圧で読ませられ、結末の意外性はなくとも、その後訪れる静かな必然性にずっしりとした満足感がある。

太くて堅い、生への魅力に満ち満ちた短編集。 大人の意見を、聞いて良かった。
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by bookswandervogel | 2009-06-06 01:52
2009年 06月 05日

「ゆずゆずり」

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なんてこう・・まいにちってやつは 晴れたり曇ったり晴れたり曇ったり・・。いやいや毎日ではなくて、いちにちの中でも 晴れたり曇ったりの大忙し。

「わたしは、まだ一度も会ったことのない人の書いたものを咀嚼するように読み、しばし思考したのち、解釈および感想を述べる仕事をしている。」という主人公のシワス。
今回の作品は小説だかエッセイだか判別できない。(著者でさえも。)

シワスは同居人3人と暮らし、途中 引越しをする。
どこかへと、自分や物事が移る前と後のフワリとした浮遊感が全体に漂う。
シワスは関わる「ひと」や「ものごと」に揺られながら、そこから生まれる妄想もまた数珠つなぎになって、ゆらゆら揺れる。そして、晴れたり曇ったり晴れたり曇ったり。
なんか自分と似ているなあ。でも言葉に表さないだけで、きっとみんなこんな感じだろう。

7章の『転ぶ』の文章が秀逸。
わずか3ページの間で苦笑いをし、ちょっと痛い思いをして、妄想は遠くの山まで飛び、また笑わされたと思ったら 最後にはなぜか涙が出そうだ。
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by bookswandervogel | 2009-06-05 00:55
2009年 06月 02日

「人生問題集」

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歌人・穂村弘と精神科医・春日武彦による対談本。
はっきり言って、どちらかというと現実の世界からズレを感じ、混沌としていて生きるのがしんどそう・・なお二人である。(共通点はヘタレな一人っ子)
けれども数々の問題に対してそれぞれの抜きん出た言語化能力によって、それぞれの道のプロとして、時に論理的に 今まだ現役文科系男子が語り合う。

この二人なのだから、大真面目なコンテンツに対して真正面に直球に返すことはないのだ。
確かに帯に『大人の答え、これで合ってる?』と書かれていたが、読んでいて「ふむふむ・・」と「えっ!!」が交互に入り交じるような。「えっ!!なにそれ どういうこと?」とつっこみたくなるようなエピソードもたくさん。
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by bookswandervogel | 2009-06-02 01:11