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2011年 04月 30日

「よなかの散歩」

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もう一方的に友達だと思ってる角田さんの新刊エッセイ集。
『オレンジページ』の連載だったためか、食べ物の、料理の話が盛りだくさん。

友達の中でも「ああ このひとはおいしい顔してるなぁ。」と思う顔って何人か居ますよね?
おいしい顔のひとはたいてい、おいしいものをいろいろ詳しく知ってるか、おいしいものを作ってくれるひと。
角田さんはやはり「おいしい顔」のひと。読み進めるうちに「ふんふん、やっぱりね。」と確信できます。
以前にBS−HIで放送された『愛と胃袋』がテーマの旅番組の中で、肉の塊を焼く場面で見せた角田さんの表情はまさに、獲物を前にして,いざ狩ろうとする人のそれでした。だって顔が真剣過ぎる。真剣過ぎて笑えた。

自分との共通項をたくさん見つけて、今回はさらに親しみを覚えました。
飲食店での単独の食事が非常に難関なこと(喫茶なら大丈夫)、茶色い食べものがなぜか好き(煮込み系ね)、町なかでたいへんよく声をかけられる(かなしいことにナンパではない)、自分の誕生日が大好き(たいていの大人は誕生日に関して落ち着いている)。
あとこの表紙は角田さんのご自宅らしいですが、表紙に使われるのに「おしゃれに見せよう、よく魅せよう」という衒いがまったく無い。
裏表紙の著者近影なんか、角田さんの後ろの物の置かれ方が実家じみてて・・最後にぷすっと気が抜けます。
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by bookswandervogel | 2011-04-30 23:44
2011年 04月 22日

出張古本屋


*4/29(金・祝)
『鎌倉路地フェスタ』に参加します。
 古本を常時置かせていただいてる『トムネコゴ』の2階で11時〜17時です。

鎌倉路地フェスタ http://roji-kamakura.net/
トムネコゴ http://thomnecogo.exblog.jp/ 


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by BOOKSWANDERVOGEL | 2011-04-22 00:09 | お知らせ
2011年 04月 20日

「そこのみにて光輝く」

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海炭市叙景での映画の評判と、小説を読んだ者の熱い思いが伝わったのか、この4、5月でなんと4冊も佐藤泰志の本が文庫化されることになった。これはほんとうにすごいこと。それまで購入して読める本は『佐藤泰志全集』(クレイン刊)と『海炭市叙景』(小学館文庫)しかなかった。どうかこの勢いで全部読めるようにして欲しい。
彼が函館の高校生だった頃に書いた作品までも、ぜひ読んでみたい。

この作品は『海炭市』の3年前、1985年に発表されたもの。
『海炭市』は冬から初夏までの話だったけれど、これは夏の話。じりじりとした夏の盛りが冒頭の一文からよみがえる。

造船所を辞めたばかりの達夫は、パチンコ屋でひょんなことから知り合った拓児に、家に来ないかと誘われる。拓児の家は開発で市が建設した真新しい高層住宅ではなく、板壁がところどころ剥がれたバラックだった。そこで達夫は拓児の姉・千夏と出会う。
この三人を軸として彼らの生活に、離れようのない家族や周りの人間が関わっていく。
貧困、厳しい労働、若さという危なさ、この世の理不尽。
そういったものを共感とやさしさに満ちた視線で佐藤泰志は描く。

読み始めてすぐから風景ができあがる。文章の表現を頭の中で映像に変換することが容易いのも、この作家の特徴だ。
防波堤にほど近いアパート、拓児の家に吊るされたコンブ、タオルで鉢巻きをした拓児の顔、たわわにつける夏のアジサイ、頭の上の鈍く揺れる太陽。じりじり、じりじり暑苦しい夏の風景が、いつか見たことのある風景のように現れる。拓児の家のじっとりした畳の匂いや湿気まで感じ取れるようだ。

『佐藤泰志作品集』に入っていたこの表題作。この小説の素晴らしさに感銘を受けたが、その第二部『滴る陽のしずくにも』が文庫版に収録され、日の目を見ることになるなんて・・・。
たからものが一冊、また一冊と生まれてくる瞬間を目の当たりにできてうれしい。
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by bookswandervogel | 2011-04-20 23:47
2011年 04月 16日

「わたしの彼氏」

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劇的な出来事が起こったり、胸をぎゅーっとされるような感動的なお話は出てこないので、たくさんの読者が居てモーレツに票を得るような作家ではないと思う。
けれど青山さんの小説を読んでいると、私は度々 ほぅーっというため息を洩らす。
難しい表現もなく、さらりと読める。気負いも、「こう書いてやろう」という企みも衒いも見えない。
人の気持ちの微妙な揺れや、想像しては消えていくそれぞれの勝手な思案だとか、情景の切り取りかただとかに ほぅーっとしてしまう。
決して書き過ぎない、難しくしない簡潔なやり方がとても好きだ。

主人公の鮎太朗は美男で優しくて素直で紳士な大学生。
こう書くと何の抜かりもないように見えるが、どうしてか彼は付き合った女性に次々と振られる。

恋を重ねて、あるようで無かった鮎太朗自身の形がだんだん露になり、影を濃くしていくという大きな流れがあるように見える。しかし鮎太朗の成長物語を目指して描いたものではない。
人が恋をした時のエネルギー、それがまっすぐまっとうなものではなくて、思い込みや勘違いや危うさというものを含んで燃え上がる、浅はかで、でも愛おしい恋のかたちが様々に描かれている。

恋人に振られたばかりの鮎太朗が、またすぐ恋する女性に出会ってしまう。
『鮎太朗は刺すような痛みに耐えかねてノートに彼女の名前を書きなぐった。自分はあまりに急速にコドリさんが好きだ、詩が書けそうなくらいだ!』

鮎太朗に片思いするテンテンが、複雑なる自分の気持ちを複雑に捉えようとするけれど、
『そもそもわたしは何を望んでいるのか?(中略)でも、そうだ、どんな理屈をこねてみても、結局わたしはそうなのだ。鮎太朗とそういうことがしたいのだ。ふつうの恋人たちのように、自分たちは恋人同士だと自信を持って、外を出歩いたりおいしいご飯を食べたり裸で触りあったりしたい。どうしても欲望に勝てない。命をかけてぜひそうしたい。』

恋をしてる人は独りよがりで浅はかでばかだなぁ。でも大好き、こういう感じ。
出てくる人物の日常のくだらなさ、みみっちさ、慎ましさ いわゆる「普通」な日常が自分と離れてなくてうれしくなった。
そしてまたまた青山さんの文章の巧みさにため息をつく。
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by bookswandervogel | 2011-04-16 10:33
2011年 04月 05日

「純平、考え直せ」

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純平は二十一歳、組の盃をもらってまだ2年目のやくざ。部屋住みの行儀見習い中。やくざでのしていくには、名前を売らないといけない。

心酔する兄貴のような粋な侠客になりたいと憧れる純平に、組長から鉄砲玉(狙撃者)への指令が下る。
決行まで、三日間娑婆で自由に過ごすようヒマとカネを与えられた純平は、今までに経験したことのないこと、出会ったことのない人々に次々と出会う。

自分の居る世界とはかけ離れている日常の風景がとても面白い。
やくざとテキ屋の違いや、やくざでの出世の仕方、管轄の刑事との駆け引き、歌舞伎町の夜に漂う色や匂い。反対に今どきのやくざにしては古風で純粋で素直な純平は身近に感じられる。

ひょんなことから純平が鉄砲玉になるまでが逐一携帯サイトにアップされる。
そこから全国各地、匿名で純平の決行についての賛否両論が繰り広げられる。

純平が次々と人と出会い、実際に得ていく温かさと、ネットの平べったく無責任な言葉の温度差が対照的に描かれている。だいたい、誰に何と言われようと、純平の腹は決まっているのだ。
そう、きっと決まっている・・・?

半分くらいまで読んで、「こうなったら嫌だな」と思った展開にならずにほっとした。
全体にコミカルで読み易いが、それだけでは終わっていないのがこの本の良さ。
純平を擁護せず、適度にほっぽりだす書き方が好ましかった。
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by bookswandervogel | 2011-04-05 23:58