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2011年 10月 23日

「高山ふとんシネマ」

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読み終えて、他人な気がしない と思った。
いや、全然違うんだけれども、いちばん根っこの部分では違わない気がする。

今まで観た映画や読んだ本、好きな音楽、夢で見た話など、とりとめもなく書かれたエッセイ。ばらばらなようでいて、すべてフラットに見える というか、どれも高山さんの中では一直線上にあるもののように見える。

本を読むのも 大豆を茹でるのも 夢で見た話を一生懸命誰かに伝える、夜中に急に掃除を始めたり、映画観て泣いたり、わからないことをわからないままにしたり、がぜんぶ同じに並んでいる。

そう、わからないことはわからないままでいい。幸せな時間を過ごしているのに、なぜか切ない。確かなことなんて、この世にはひとつもない。正しいだけのことなんて、ちっとも興味がないの、と言っているかのような彼女の文章は、読んでいるこちらをふわあっと軽く持ち上げてくれる。

すてきなパートナーも、可愛らしいお母さんも、様々な友達も、たくさん高山さんの周りには居るのに、どこかひとりぼっちなイメージが拭えない。ひとりぼっちだけど、孤独とは違う。さびしがりや、でもない。

谷川さんの詩を思い出させるひと。

みんな知ってる 空をながめて
みんな知ってる 歌をうたう
だけどおれには おれしかいない
そうだ おれには おれしか いない
おれは すてきな ひとりぼっち
              (すてきなひとりぼっち/谷川俊太郎)
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by bookswandervogel | 2011-10-23 11:59
2011年 10月 09日

「プラナリア」

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先日ある作家さんとお会いした際に薦められました。
この方はいつもすごい読書量。たくさん書いてるのに、いつ読むんだろうか?会うたびお薦めを聞くのですが(こちらが書店員なのにお恥ずかしい・・・)これ読んでないなら・・といくつか紹介していただいた中の一冊。

どちらかというと面倒臭そうな女の人の話は避ける傾向にあるのと、「現代の”無職”をめぐる心模様」とどこかに書かれていたのを見ていたので、働くのが好きな私にはピンと来ないかも?と判断して読んでいなかった。

表題作『プラナリア』の主人公・ルンちゃんは乳がんの手術後、何をしても面倒くさく、興味を持てず、自暴自棄になってしまう。常にイライラしたり気分次第で周りを振り回したり。同情されたいし、されたくない、という複雑な感情を外に向かって当たり散らす。

なんと身勝手で我がままな・・とその振る舞いに呆然とするが、本当に病気になった人でないとわかり得ない、「辛く苦しいけれど、回復に向かってがんばります」という表向きではなく、いろいろなものを自己消化できない、どうしようもない袋小路に入ってしまう孤独な感覚は想像できなくもない。

2章目の『ネイキッド』
「私は自分がやがて立ち直って、また社会に出て働きはじめるであろうことは分かっていた。疑問を持ちつつもまた前へ前へと進んでいくのだ。それが何故だか分からないがとても悔しかったのだ。転んで怪我をしても、やがてその傷が治ったら立ち上がらなくてはならないのが人間だ。それが嫌だった。いつの間にか体と心に備わっている回復力が訳もなく忌々しかった。」

社会的な価値観に沿って生きられない焦りが全体に感じられる。
疑問を持ちつつ前へ前へと進んでいくのは、きっと彼女だけではないだろう。
働いている誰もが、頭のどこかに感じているもの。そしてぼんやり霞ませて見えないように努めている。でもそういうもの含めて「生活」かな、とも思う。

「どうして私はこんなにひねくれているのだろう」と書かれた裏表紙を見て、ああほんとにそう、ほんと面倒くさそうな人ばかり出てきた・・と振り返りつつ、正直自分はそういうことがないとは限らない、と重ね合わせて読んだ部分が無いとも限らない。(←じゅうぶん面倒くさい。)
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by bookswandervogel | 2011-10-09 23:48