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2009年 04月 11日

「悼む人」

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いかなる死者も平等に 死に方ではなく「誰に愛され、誰を愛し、何をして感謝されたか」のみに目を向け、亡くなった場所で悼む旅を続ける主人公・静人。
まるで聖者のように自分を犠牲にしてまで、全く他人の死まで自らに刻み込もうとする彼の行動に最後まで理解に苦しんだ。

遺族や近しい人を無くした人から見て、死者について上辺だけを聞きまわり、わかったように死を悼み、また次の死者へと旅する行為は どんなに突き動かされる思いがあったとしてもエゴに走っているようにしか映らない。

誰の命にも軽重は無いのはわかる。が、やはり近しい者の死は他人の死よりも重いもので、その人の今後の人生までも変えてしまうほどのものだ。
誰の死も平等にと言いつつ、新聞記事に載った事件・事故がほとんどで、殺人者などの死は 被害者側を3回悼んでから、とか彼が「旅を続けるために作った」ルールも理解できない。
もし自分が死に瀕した誰にも看取られず遺族も居ない者であれば、死後も自分の存在を憶えていてくれる、という静人の存在は とても安心でき 尊いものであるだろう。
けれど 死=無という考え方もある。
誰しもが憶えていて欲しい、と望んでいるように思うのも、独りよがりな考えにも感じた。

病に冒され、死に向かう静人の母が 彼を訪ねてきた者に対して問う。
「静人はあなたにどう映ったんです?あなたには何を残しましたか?そしてあの子が悼みを行った、亡くなった人々のことを知り、あなたには何が残りましたか?」
この本のテーマはここにある。
静人の旅を他人事として見ながら、それぞれの死生観を自ら知らず知らずに問うことになる。
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by bookswandervogel | 2009-04-11 01:36


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