人気ブログランキング | 話題のタグを見る

BOOKS WANDERVOGEL

bookwangel.exblog.jp
ブログトップ
2009年 08月 23日

「骸骨ビルの庭」

「骸骨ビルの庭」_b0145178_0255619.jpg「骸骨ビルの庭」_b0145178_0261136.jpg










阿部轍正は27才で戦後復員し、大阪・十三にあった実父の持ちビル”骸骨ビル”を手に入れるが、そこには既に戦争孤児が住みついていた。ー

阿部は生涯独身を貫き、戦争孤児たちを育て上げた。
時が経ち、平成6年 今だ骸骨ビルに住みついている大人になった孤児達を立ち退かせるためにやって来た男(脱サラし人生の岐路に立っている。)は、その住人達と触れ合いながら 亡き阿部が残していったもの、阿部の生き方の意味を、時を超えて知らされることになる。

本文で引用されているヴィクトル・フランクルの『意味への意志』が興味深い。
「われわれは他者の人生に意味を与えることはできませんー人間の人生への究極的意味への問いに対しては もはや知的な答えはあり得ない。ただ実存的な答えしかあり得ないからです。」
人生の旅のはなむけとして他の存在に与えることのできるものーそれはただひとつ、まるごとの私の存在という実例だけだ、という言葉は 誰に対しても優しく、かつ存在する意味を与えてくれる温かい言葉だと思った。

by bookswandervogel | 2009-08-23 01:17


<< 「静子の日常」      「終の住処」 >>