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2009年 10月 17日

「父を葬る」

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ガンと痴呆を患って、少しずつ少しずつ壊れていき、少しずつ少しずつ死に近づく父。
父を喪おうとしている家族。そして「私」。


山と渓谷ばかりの、九州は高千穂に100年続く家の「私」が見てきた家族の死と父の思い出。父は呆けているはずが 時折「私」を騙しているかのような言葉を発し、翻弄する。


「死ぬのは怖いもんか」
「ちいっとも」
「ほう、怖くない」
「おまえは、どうじゃ」
「おれは..怖いな」
「しっかりせんか。死んだら山に還るだけじゃ。なんが怖いもんか」

家族というものの血、故郷という離れたくとも離れられない土俗的なものが色濃く描かれる。
「私」の心の動きは とっくにいい歳した大人であるのに 繊細な傷つきやすい子供のようだ。
「私」の父への、他者への寄り添い方がどこまでも優しい。全く嫌みのないやさしさ。
それ故に出てくる人物が誰彼と愛しく思え、夫の死にやたらと執着する「私」の母は嫌悪感さえ覚えるが、最後では抱きしめたいくらい。
なんとも素晴らしい作品に出会った。
二上山、という山に遺灰は撒かれた。そこに咲くというアケボノツツジが 見たこともないが目に美しく浮かぶ。
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by bookswandervogel | 2009-10-17 01:42


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