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2009年 11月 07日

「ジュールさんとの白い一日」

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エゴン・シーレの表紙絵に惹かれて手に取った。

冬のオランダ。周りの音がすうっと吸収されたような、雪の降った日の白い朝。アリスがいつものコーヒーの香りで目を覚ますと、朝食の用意を終えてソファに座ったジュールは静かに死んでいた。

夫の突然の死にアリスは動揺する。夫の死を素直に認めることができず、ふだんと変わりのない一日を送ろうとする。けれどジュールの体からは刻々と最後の生の香気が流れ出し、それにあと少ししたらジュールとチェスをするためにダビットが家にやって来る・・・。

ダビットは自閉症の青年。物質世界への関心や理解が健常者よりも強いこの青年が、物事をありのままに捉える行動特性によって 追想と感情の嵐に翻弄されるアリスに「ジュールさんは『外側』だけになった」ことをゆっくり認めさせる。ぎこちないが静かに、とても安定した存在で。

現実的には第三者をも慌ただしく介入してくるだろう別れの作業だが、大切な人との別れは本当はこうでありたいと願う 静かな静かなジュールさんとの白い一日。
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by bookswandervogel | 2009-11-07 15:35


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