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2009年 12月 18日

「小太郎の左腕」

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『奇妙な少年であった』
そんな一文から物語は始まる。
歴史小説にありがちな「時は○○・・」みたいな説明は無く、魅力ある人物の描写から始まる手法は ぐっと惹き付けるスピード感があり、歴史モノに疎い私でも読みやすい。

戦国の猛将・林半右衛門は山で猟師の孫・小太郎と偶然出会う。
訳あって隠されていた小太郎のスナイパーとしての腕を知った半右衛門は、戦に小太郎を連れ出すことを目論むが・・・?

戦いにおいてどちらが勝った負けたに重きを置くのではなく、その時代に生きる一人の人間としての心の動きにスポットを照らすのがこの作家の魅力だ。
戦国時代の、大名 武将 その家臣、足軽、百姓に至るまでのそれぞれの人物の心の内を丁寧に描くことで、その時代の大きな社会が汲み取れる作りになっている。

後半部分、半右衛門が自身の決めごと『嘘を吐くまい、卑怯な振る舞いはすまい、恐ろしいと思うたことから逃げまい。そうした決め事をどんどんなくしていく』と苦悩する。
「何をもって生きることを美しいとするのか」ということを生きることの最大の意味としてとらえた彼らの ある意味子どものように単純で純粋な心に胸を打たれた。
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by bookswandervogel | 2009-12-18 23:57


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