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2010年 05月 22日

「悲しみを聴く石」

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白水社EXLIBRIS(エクス・リブリス)シリーズ。
まだ出来たてのこのシリーズは、まず装丁が素敵で魅力的。
世界文学というのはどこから読んでいいものか..?と迷う人に気軽に道案内をしてくれます。
あとがきを読むと、多くの人に読んでもらいたい!という翻訳者のひしひしとした熱さも感じる。

『アフガニスタンのどこか。または別のどこかで』
戦場から植物状態となって戻った男が横たわる部屋で、妻はコーランの祈りを唱えている。
やがて一向に目を覚まさない夫に向かって、妻は誰にも話した事のない秘密を語り始める。

部屋の外では内戦が続き、銃声が響き渡っている。
外の様子とは反対の静かな密室で妻は、ペルシア神話に伝えられる”忍耐の石”に夫を置換え、自由へと向かって告白を続けるうち、虐げられ、耐えに耐えてきた人格がだんだんと崩れてゆく。

人には言えない苦しみや悲しみを打ち明けると、その石はそれをじっと聞き、言葉や秘密を吸い取り、ある日、粉々に打ち砕ける。その瞬間、人は苦しみから解放されるという。

果たして石は砕けたのか?
砕け散ったのは夫なのか、妻の人格なのか、それとも長く苦しい抑圧から解放された妻の苦しみだったのか。
自由への扉は開かれたと思いたい。それにしても衝撃のラスト。
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by bookswandervogel | 2010-05-22 01:41


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