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2010年 05月 30日

「慟哭」

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普段ほとんど(というか まったく)独り言を言わない私でも、本当にびっくりした時には声を発するんだなぁと、自分の生態を改めて知らされた気がします。

連続する幼女誘拐事件の捜査は行きづまり、捜査一課長は世論と警察内部の批判を一身に受ける。若くしてキャリア課長である彼の私生活の方に、世間やマスコミは徐々に関心をよせていく。
一方で、ある悲しみを背負い、カルト教団にのめり込んでゆく一人の男。二つのストーリーが平行して語られてゆくその先にいったいどんな結末が・・・?

警察内部の縦社会や 新興宗教の緻密な描写が、客観的かつ冷徹な語り口で進められていく。その圧倒的な筆力に引き寄せられ、淡々と悠然と構えて読んでいたつもりがぐいぐいと惹き込まれ、二人の男 それぞれの場面で異なった感情を揺さぶられていた。

重く硬質な文章で人間の脆くて弱い部分を描いた、ミステリや本格といったジャンルを超えて文学として非常に読ませる作品。
これが弱冠25歳で書いたデビュー作とは!非凡な才能の持ち主に、またも「ええっ!?」と声を上げずにいられない。

by bookswandervogel | 2010-05-30 15:40


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