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2010年 10月 15日

「シューマンの指」

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冒頭「私」はかつての友人から手紙を受け取る。その手紙にはシューマンに憑かれた天才ピアニスト・永嶺修人がドイツでピアノの独奏をしていたと書かれていた。30余年前のあの日、彼は右手中指を、ピアニストの指を永久に失ったというのに..?

ミステリの入り口が突然開かれどきどきする。
「私」はかつて惹き付けられていたピアノ、シューマン、そして永嶺修人との日々を回想しはじめる。
シューマンの作品世界に対する音楽的評論の部分と小説が美しい言葉で重なり、今までに読んだことの無い感覚を味わう。けれどこの前半部分の雰囲気も、作者の手の内だったのか..と後から打ちのめされることになるのだけれど。

夜の音楽室で、修人がシューマンを弾く。
3ページに及ぶその描写は特に耽美的で、読む者だれもが聴いたことのない音楽が頭の中に流れ出し、夜の闇に旋律が踊るように現れ、その美しいピアニストが弾き終えた後の残響までも耳に残るような、小説世界ならではの体験に喜びを感じた。

やがて事件は起きて二重、三重にも謎のヴェールは掛けられる。
が、終盤にかけてそのヴェールを読む者はちゃんと開けているのか さらに上から掛けているのか..?
幻想と覚醒、狂気が入り交じった物語の後ろでずっと音楽が鳴っている。
とにかく、無性にシューマンが聴きたくなります。
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by bookswandervogel | 2010-10-15 23:58


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